お知らせ
【事業再構築補助金の採択者必見】産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)とは?
新型コロナウイルス感染症の影響で、事業を収縮せざるを得ない状況になった中小企業や小規模事業者が多くなりました。
コロナ過で被害を受けた事業者などに対して支援するために、政府は2021年2月に産業雇用安定助成金を創設しました。
2023年4月1日には、産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)として事業再構築を行うために必要となる人材の確保を重点においたコースを設けました。
今回は、産業雇用安定助成金の事業再構築支援コースについて詳しく紹介します。
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)とは
産業雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響等で事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主に、金銭的支援を行う制度です。
事業再構築支援コースでは、新事業への進出等の事業再構築を行うために必要な、新たな人材の円滑な受入れを支援することに力を入れています。
対象となるのは、事業主と労働者の両方であり、それぞれの要件を満たさなければ助成金を受け取ることが出来ません。
ここからは、産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の目的や対象となる要件などについて紹介していきます。
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の目的
新型コロナウイルス感染症の影響下での労働者の雇用維持が主な目的となります。
令和5年4月1日以降に事業再構築補助金の応募書類を提出し、交付決定を受けている事業者が再構築に必要な人材を雇用する場合に助成金が交付されます。
事業再構築補助金では賄えない人件費の部分をカバーしてくれるのが特徴と言えるでしょう。
助成対象(主な要件)
助成対象となるのはそれぞれ要件を満たした場合に限ります。
助成対象となる要件は以下のようになります。
<事業主>
① 令和5年4月1日以降に中小企業庁の実施する「事業再構築補助金」の応募書類を提出し、交付決定を受けていること(第10回および第11回公募要領の「物価高騰対策・回復再生応援枠」と「最低賃金枠」に限ります。 また、事業計画に記載する「実施体制」の中に人材確保に関する事項を記載した場合に限ります。) |
② 対象労働者の雇入れにあたって、次のa~cまでの全ての条件を満たすこと a. 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れること b. 期間の定めのない労働契約を締結する労働者(パートタイム労働者は除く)として雇い入れること c. 「事業再構築補助金」の補助事業実施期間の初日から当該期間の末日まで※に雇い入れること ※事業再構築補助金について事前着手の承認を受けている場合は当該補助金に係る応募書類の提出日の翌日以降の雇入れが対象となります。 |
③ 対象労働者に対して1年間に350万円以上の賃金を支払っていること |
④ 雇入れ日前6か月から本助成金の支給申請までの期間に、労働者の解雇等していないこと |
⑤ 原則として基準の期間内の特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が、被保険者数の6%を超えていないこと |
⑥ 過去に本助成金の支給決定の対象となった労働者を解雇していないこと |
⑦ 受給に必要な書類を整備し、労働局等に提出するとともに保管して、提出を求められた場合は速やかに応じること |
⑧ 労働局等の実地調査を受け入れること |
また、事業再構築補助金の採択を受けた事業者でなくてはならないので注意しましょう。
<労働者>
「事業再構築補助金」の交付決定を受けた事業に関する業務に就く者であって、以下の項目に当てはまる場合に限られます。
① 次のaまたはbのいずれかに該当する者 a.専門的な知識や技術が必要となる企画・立案、指導(教育訓練等)の業務に従事する者 b.部下を指揮および監督する業務に従事する者で、係長相当職以上の者 |
②1年間に350万円以上の賃金が支払われる者(時間外手当及び休日手当を除いた、毎月決まって支払われる基本給および諸手当に限る。) |
受給額と助成対象期間
対象労働者に支払われた賃金の一部に相当する額として、下表の金額が 支給対象期(6か月)ごとに支給されます。
中小企業 | 中小企業以外 | |
助成額 | 280万円 | 200万円 |
支給方法 | 140万円×2期 | 100万円×2期 |
助成対象期間 | 1年 | 1年 |
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の主な支給対象外となる要件
主に下記のケースは支給対象外となりますので、注意しましょう。
①過去3年間に、事業主と雇用等の関係にあった対象労働者を雇い入れる場合 |
②過去1年間に、対象労働者と雇用等の関係にあった事業主と独立性が認められない事業主が、対象労働者を雇い入れる場合 |
③対象労働者が、事業主または取締役の3親等以内の親族(配偶者、3親等以内の血族や姻族)である場合 |
④支給対象期の対象労働者の賃金が、支払期日までに支払われていない場合 |
⑤過去に不正受給による不支給決定等を受けたことがあり、当該不支給決定日または支給決定取消日から3年または5年の該当期間を経過していない場合 |
⑥平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について不正受給に関与した役員等がいる場合 |
⑦支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度で労働保険料の滞納がある場合 |
⑧支給申請日の前日から起算して過去1年において、労働関係法令違反で送検処分を受けている |
⑨風俗営業等関係事業主である場合 |
⑩事業主または事業主の役員等が暴力団に関係している場合 |
⑪支給申請日または支給決定日の時点で倒産している場合 |
⑫役員等の氏名、役職、性別、生年月日が記載されている別紙「役員等一覧」または同内容の記載がある書類を添付していない場合 |
⑬「雇用関係助成金支給要領」に従うことに承諾していない場合 |
⑭支給申請書等に事実と異なる記載または証明を行った場合 |
受給までの流れ
ここでは、受給までの流れを紹介します。
また、第2期支給申請も同様の手続きが必要です。
<1.事業再構築補助金の応募書類の提出>
事業再構築補助金の応募、申請先は中小企業庁です。
<2. 採択審査委員会による採択・審査>
<3. 事業再構築補助金の交付申請>
<4. 事業再構築補助金の交付決定>
<5.対象者の雇入れ(補助事業実施期間内)>
事業再構築補助金について事前着手の承認を受けている場合は当該補助金に係る応募書類の提出日の翌日以降の雇入れが対象です。
<6.助成金の第1期支給申請>
支給申請書を作成し、支給対象期ごとに都道府県労働局またはハローワークへ提出しましょう。
<7. 支給申請書の内容の調査・確認>
提出した支給申請書の記載事項などを支給要件に照らして審査します。
<8.支給・不支給の決定>
適正と認められる場合、助成金が支給されます。審査には一定の期間を要します。
審査結果は、通知が送付されてくるので確認しましょう。
<9.助成金の支給>
支給決定から事業主指定の金融機関口座に振り込まれるまでに、一定の期間を要します。
支給申請時の提出書類
支給申請時に提出が必要な書類は次のとおりです。
このほかにも労働局から書類の提出を求められる場合があります。
・支給申請書(様式第1号)
・対象労働者雇用状況等申立書(様式第2号)
・事業再構築実施結果報告書(様式第3号)※第2期のみ
・事業再構築補助金の交付決定を受けていることが確認できる次の書類の写し※第1期のみ
a. 事業再構築補助金の応募と補助金交付申請(計画変更申請を含む)において、事業再構築補助金事務局と独立行政法人中小企業基盤整備機構に提出した書類一式(事前着手の承認を受けている場合であって、当該補助金の交付決定前に対象労働者を雇い入れた場合は、応募書類提出日の分かる書類を含む。)
b. 事業再構築補助金の採択と交付決定(計画変更承認を含む)に係る通知書類
c. 事業再構築補助金の事前着手の承認に係る通知書類(事前着手の承認を受けている場合であって、当該補助金の交付決定前に対象労働者を雇い入れた場合に限る。)
・雇用契約書または雇入れ通知書※第1期のみ
・賃金台帳または船員法第58条の2に定める報酬支払簿(対象労働者の労働時間と対象労働者の支給対象期の労働に対して支払われた賃金が手当ごとに区分されたもの)
・出勤簿等
・対象労働者であることを証明する業務内容、部署が明らかにされた事業主の組織図等の写し※第1期のみ
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
・支払方法・受取人住所届(共通要領様式)
支給申請の手続き
実際の申請手続きは、支給対象期ごとに2回行います。
事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークで手続きを行いましょう。
支給申請期間は、各支給対象期の末日の翌日から「2か月以内」です。
なお、第1期と第2期の支給対象期を合わせて、助成対象期間と呼ばれています。
また、支給申請はオンラインでも受け付けています。
オンライン申請をする際は、産業雇用安定助成金のホームページからアクセスしましょう。
申請の注意点
注意点1 | 原則として、事業再構築補助金の申請時に提出する事業計画の中に、人材確保に関する事項を記載しておく必要があることが挙げられます。 |
注意点2 | 交付決定を受けた事業再構築補助金の補助事業実施期間内に雇い入れる必要があることも注意すべき点です。 |
注意点3 | 第1期支給対象期の支給申請は、助成対象期間を通じて支給要件を満たすことを前提としたものです。 そのため、第1期支給対象期の支給決定後に助成対象期間に支払われた賃金額が350万円に満たなかったなど、支給要件を満たさないことが判明した場合は、既に支給された助成金は返還が必要となるので注意しましょう。 ただし、月に無給日(事業主の責めに帰すべき理由による場合を除く)が10日以上ある場合は、支払われた賃金額が350万円未満であっても、当該無給日のある月を除いて支給額を算定の上、支給される場合があります。 |
注意点4 | 支給決定までの間に対象労働者が離職した場合は、原則不支給となる点も注意が必要です。 天災などのやむを得ない理由による解雇で、支給対象期の途中で事業主が対象労働者を雇用しなくなった場合は、当該日の前月までの期間について支給されます。 |
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の活用方法
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)はで支援を受けるためには、まず事業再構築補助金に採択される必要があります。
事業再構築補助金に採択された事業が該当の取り組みを行うための人材を受け入れる際に活用できる制度です。
ここでは、どのような事業が事業再構築補助金の交付の対象となるのかということと、産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の活用方法の一例について紹介します。
新分野展開
コロナ過以前は、宿泊施設や観光施設などの事業施設向けの建設業を営んでいたが、新型コロナウイルスの影響により業界全体が業績不振に陥っていました。
そのため、人件費の削減をせざるを得ない状況となりました。
そこで、新たに需要が増しているアクリル板などのプラスチック加工製品の製造に着手し、新分野へ展開していきました。
これまでの建設業のノウハウだけでは、新事業であるプラスチック加工製品に対して対応できないため、知識や経験のある人材確保のために助成金を活用しました。
業態転換
飲食業としてレストランを経営していたところ、コロナウイルスの影響により来客数が大幅に減少しました。
そのため、人員削減をせざるを得ない状況となりました。
業態転換して対応し、店舗の一部を縮小し、非対面式の注文システムを活用したテイクアウト販売を新たに開始しました。
助成金を活用して、非対面式の注文システムに詳しい人材の確保をしました。
新たに雇用した人材から新システムへの知識を教わることにより、既存の従業員の人材育成にも役立つことになりました。
事業再編
パルプ装置・製紙機械を製造している事業者が、コロナの影響により需要が低迷しました。
そのため、人件費を削らなければならなくなりました。
そこで、事業再編として新設合併を行い、新たにマスクなどの衛生製品の製造業を開始しました。
新設合併によって新たに発生する人件費の補填として、助成金を活用しました。
まとめ
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)は、事業再構築補助金の交付が決定していなければ活用できません。
事業再構築補助金は大型の補助金制度であり、経費の対象となるものも多く利用価値の高い補助金です。
しかし、人件費は補助対象外であり新たな雇用に対する費用の問題は解決しません。
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)は事業再構築に関する人件費を助成してくれる制度なので、事業再構築補助金の補助対象外であるものを補填してくれます。
事業再構築補助金を活用する際には、産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)を活用した人材の確保も検討してみると良いでしょう。